『授乳』(村田沙耶香)についてのすべてのヨミメモ

授乳
村田 沙耶香
出版社: 講談社   出版日: 2005-03-01   ページ数: 253

私は母のヒステリーを待った。だが次の日になっても、その次の日になっても、母は何も言わなかった、その時脱いだ私の下着は、いつのまにか私の箪笥に収まっていた。そしてふと気がつくと、母は私と父の洗濯物を一緒に洗濯機で回し、自分の下着はお風呂に入るときに一緒に洗って寝室に干すようになっていたのだ。
あたしは久しぶりに現実界に帰ってきた気がした。ここで生まれてここで育った筈なのに、すっかり虚構の世界にとらわれ、そこに馴染み、生活し始めていたところだった。
ここがとても不出来な理想郷だったと気付いていたが、今さらわかってもしがみつく以外にどうしようもないのだ。あたしはもう空想の住民になってしまったから外には行けない。