yuhr さんのヨミメモ

『喜劇の手法 笑いのしくみを探る』(喜志哲雄) by yuhr


これらのやりとりに鮮明に表れているのは、語り手が自分自身を、また自分自身の心理や行動を、できるだけ対象化しようとする傾向である。身も蓋もない言い方をするなら、これでは恋愛はできない。機智合戦という手法は、特にイギリスの風習喜劇においては連綿として用いられてきたが、そこで何よりも印象的なのは、それに従事する恋人たちが、機智を保ちながら恋をするという、普通に考えたら不可能なことをしようとして苦労する様子である。恋愛は没入なしには成立しない。風習喜劇の作家たちは、没入を斥けるという無理なやり方を選ぶことによって、かえって緊張感のある恋愛を描こうとしているようだ。

喜劇の手法 笑いのしくみを探る
喜志 哲雄
出版社: 集英社   出版日: 2006-02-01   ページ数: 221