yuhr さんのヨミメモ

『あるヒステリー分析の断片―ドーラの症例』(ジークムント フロイト) by yuhr


精神分析治療のなかで、正しい根拠をもった、異議の唱えようのない一連の想念が浮かび上がってくると、医師にとって、たぶんそれは困惑の瞬間となるだろう。患者はその瞬間を捉えて、「でもこれはすべて真実ですし、もっともなことでしょう? 私が先生にお話ししたことに、なぜ先生は変更を加えようとなさるのですか」と尋ねてくるからだ。しかし、そののち明らかになってくるのは、そうしたさい患者は、分析による攻撃が仕掛けられないこうした想念を、批判や意識から逃れようとする別の想念を隠蔽するのに利用しているということだ。
子どもたちは、嘘をついたと責められると、躊躇なく「おまえこそ嘘つきだ」と言い返すのである。大人が悪口を相手に投げ返そうとするときには、同一内容の反復に重きはおかず、敵対者の現実の弱点を何か探し出そうとするだろう。またパラノイアにおいてこの種の非難の投射が他者に対してなされるさいには、非難の内容は変更されず、したがってそれはまた現実に依拠することもない。この場合、その投射は妄想形成の行程として顕在化するのである。