yuhr さんのヨミメモ

『自己と他者』(R・D・レイン) by yuhr


彼女は終幕の劇的な袂別をさまざまな形で想像し、その場面を夢中になって想像している最中に自分自身がひどく泣いているのに気づいた。いまのところ想像の段階でしかない状況を自分の心に描いただけで、こんなに激しい感情とほんものの涙がこみあげてくるなんて、いかにもわたしらしいことだと彼女は思った。〈そのときが来たら〉自分はなんにも感じないだろうと、きわめて正確に彼女は予言した。現実の情事の終りは、散文的で退屈なものだった。
彼女は、想像のなかで過去の状況を再び生きたが、それはかつて想像しただけでそれ以上に発展しなかったものであった。回想のなかでは、過去の想像上の状況が、実在のものとなった。

自己と他者
R・D・レイン
出版社: みすず書房   出版日: 1975-09-26   ページ数: 240