yuhr さんのヨミメモ

『血と言葉―被精神分析者の手記』(マリ・カルディナル) by yuhr

血と言葉―被精神分析者の手記
マリ・カルディナル
出版社: リブロポート   出版日: 1983-04-01   ページ数: 334

私がもはや他人とは生きていけなくなった事実を、どうしてこの血の話から説明せずにいられよう。
習慣のせいで、動作はすばやく、確実だった。これは、どんな姿勢の時でも、人目につかずにできた。
かすかに色のついた分泌物が現れると、とたんに喜びに似た感情がこみあげてくる、——「もし、このままじっとしていれば、出血は完全に止むかもしれない」
奇形のくたびれた膣が溶け入ってしまいそうな広大な白、頭を離れない忌わしいイメージが呑みこまれてしまいそうな深い白だった。
消毒薬と石鹸の臭いのする、清潔な部屋。隅々まで埃一つない。タイルの表面は、鏡のように指先がすべる。
「いつか子供たちを産んで、子供たちと、子供たちのために、あたたかく、愛情と思いやりにあふれた、明るい家庭を築くのだ」と、私は幼い頃から自分にいいきかせてきた。それらはすべて、私自身が子供の頃に夢みたものだった。
遂に、ある朝、目覚めとともに、私は完全に《あれ》の餌食となった。
もう一つは脈搏を数えることで、これもまた、人目を忍んでこっそり行った。手首をおさえているところをみられて、「どうなさいました? 気分でも悪いのですか」などといわれたくなかったからだ。
ポタリ、ポタリとしたたり落ちる血を、私は体をあやすように軽く前後にゆすりながらみつめていた。自分だけではなく、《あれ》をもあやしているのだと意識しながら。
私は母に誇りに思われたかった。母に捧げたのは私の力であって、不快感や恐怖心ではなかった。しかし、この晩、母が私に示したあたたかい思いやり、馴れ合い、親密さをみて、私は自分が誕生した際に母から授かったのは死であり、母が返してほしいと願ったのも死であり、二人の関係、私が長いあいだ求めていた関係も死であったことを悟った。私はそれに戦慄した。