yuhr さんのヨミメモ

『声の文化と文字の文化』(ウォルター・J. オング) by yuhr


書くことによってわれわれは「ことば〔語〕」をモノのようなものと思ってしまう。なぜならわれわれは、ことばというものを、解読されるべきことばを合図する目印のように考えるからである。つまり、われわれは、テクストや本のなかに、そのように書きこまれた「ことば」を見ることができ、それに触れることができるというわけである。〔しかし〕書かれたことばというのは残りかすである。
今日では以前ほど頻繁には用いられなくなっているけれども、過去において、「口承文学〔声デ書カレタモノ〕oral literature」というようなまったくおかしな概念を学者たちは生みだしてきた。今日でも、このまったく形容矛盾の術語はまだ依然として通用している。この術語は、ことばで組織されたものの遺産が書かれたものとはまったく関係のないときですら、そうした遺産を書かれたものの一変種としてしか心に思い描けないわれわれの無能ぶりをいかにもぶざまに示しているのだが、そうしたことを、今やますます敏感に感じとるようになっているはずの学者たちのあいだでさえ、この術語はまだ使われているのである。

声の文化と文字の文化
ウォルター・J. オング
出版社: 藤原書店   出版日: 1991-10-31   ページ数: 405